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平成16年8月  先月、下記のようなメールがきました。それに対する返答。たびたび           似たようなご質問があるので、今回掲載してみました。
突然のメールで失礼します。
興味深くホームページ拝見させて頂きました。大変失礼かと思ったのですが、
どうしてもお聞きしたいことがあってメールしました。私は34歳で埼玉の造園屋で修行中です。将来は独立を希望しております。修行も4年目に入り、疑問を抱くようになりました。
私の勤めている会社は公共事業が主体で個人庭での剪定のチャンスがなかなかありません。そこで他の会社への転職を考えるようになりました。京都へと考えていたのですが、社長に
その旨を話すと甘いとの指摘。まず、今の技術をもっていっても意味がないとのこと。
関東と京都では植木の仕事が全く違うので行くとしても確かな技術をもって、確認の意味で行く場所であるということ。寺社や歴史のある庭が多いので、維持するための消極的な管理しかしないということでした。もちろん会社によって違うとは思うのですが…京都に関してアドバイスをもらえる人はおらず、大変申し訳ないと思いましたがメールさせて頂きました。お忙しいとは思いますがご意見頂けたら幸いです。
よろしくお願い致します。   T
以下、私の返答・・・。
T 様

メールありがとうございます。
私の京都へ行った目的を少し・・・。それと、私が1年弱の間に見た、京都の植木職人
について。

まずTさんと同じ様に、造園見習い経験4,5年目位だったと思います。
一通り植木屋の仕事がわかってきて、すごい庭がいっぱいある京都の植木職人は
どんな仕事をやっているのか、と思うようになっていました。また、完成された庭を、住んでみて、ゆっくり見たいというのが最大の目的でした。独立前の1年位で、特に長居する気はありませんでした。
とりあえず初回は、有名どころの植木屋数社に飛び込み、「すいません、横浜から庭職を勉強したくて来ました。京都で働きたいんですけど・・。」みたいな感じで。門前払いのトコもあったし、専務が出て来て話を聞いてくれるトコもありました。保証人はいるのかとか、誰かの紹介状はあるのかとか結構色々言われました。もちろんそんなもんはないので、有名どころは断念。そんなんで初回は諦めて、また地元で仕事してました。それから約1年位して、付き合っていた彼女に振られたのがいい踏ん切りとなって、今回は絶対雇ってもらうつもりで再度上洛。
まず職安に行って下調べ。しかしどうしても有名どころが捨て切れず、あちこちに電話しました。でもやっぱりダメ。3日目の夜に、職安で見て気になっていた会社に電話。
翌朝、上賀茂神社にものすごい怖そうな?親方が迎えに来てくれて会社へ。事務所に着くと
優しそうな奥さんがいて、「よー来はったなー。」みたいな感じで。
そこで京都の植木屋事情をいろいろ聞きました。
まず、植木屋は星の数ほどあるという事。剪定しかやらない植木屋、石の仕事ばっかりやってる植木屋、銘石や灯篭ばかりを買い付けている植木屋、などなど。
すばらしい庭がたくさんあるので、管理の仕事が多いのは確かでした。しかし、横浜、鎌倉あたりでは教わらなかったことはものすごくありました。例えば、剪定バサミの使い方や庭の歩き方など。意外と知っているようで知らないこと。そして、1番私が得たものは、庭仕事に対する意識。技術的なものも、全てそこから発するように思います。道具をとことん大事にするとか、現場の行き帰りのトラックの荷造りだとか・・・。それは京都にいようと、横浜であろうと同じだと思います。その意識があれば。でもそれは、京都に行かなければ気づかなかったことです。
それだけ京都の庭職、特に私達の親方はこだわってました。
庭掃除にしても、手ボウキを右手でシャキシャキ使いながら、左手で草を取って行き、前に置いてあるテミの中へ掃き込んでいく。挙句には、ピンセットを持ち出して、スギゴケの中の小さな草を取っていく。それにはさすがに驚いたけど。「俺もピンセット買った方がいいですかね?」って、先輩に聞いた覚えがあります。
その他に、サンマタの上手な使い方や、デッチ車、地ゴテ、ドンゴロス、カックイ・・・。色々知り得ました。
まー京都の庭職はそこまでやってるってことかなー。それが果たして、横浜に戻ってきてどこまで使えるかなんてことは、自分の方向性や客層によって左右されることだと思うけど・・。
それだけ京都のお客さんは、やらせてくれるってこともあると思う。それだけ庭にお金をかけるというか。
それから、京都の植木職人は若い子が多いと思います。例えば、地方の植木屋のせがれを5年位預けたりとか、造園関係の大学などを出て、独立目指して頑張ってる奴とか。20代前半〜30才位までの奴が、何かしらの目的意識を持ってやってるのが多いように思います。

話せばまだまだありますが、とりあえずこんなトコで・・。
以上のような感じが、Tさんの親方が言う、消極的なのかどうかは自分自身で行ってみて
判断してみてはいかがでしょうか。

それともうひとつ、20代前半の若い時に、かけがえのない親方や奥さん、仲間と出会えたということは、現在の自分に非常に大きなものになっているのは間違いありません。
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