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平成16年11月  犬の口にガムテープを巻く男・・。
10月上旬、あるマンションの現場にて、悲しいというか、あきれたと言おうか、なんか腹立たしいものを見てしまった。朝から小雨が降っていて、現場に着いた頃には降り方が強くなっていた。毎年二人で半日位で終わる現場なので、そそくさとカッパを着込んで庭に入っていった。そこの庭は砂利が敷き詰めてあり、刈り終えた後の掃除が大変なので、植木を刈る前にシートを敷いていた。シートを敷いている時に、いつになく動物の臭いがやたら漂っていたので、何気に植え込みの中を覗き込んだりしていた。
「ネコでも死んでんじゃねーかな?」とか思いながら・・。そんな事を考えながらふっと振り返ると、庭から1m位下がった1階のベランダにいた犬と目が合った。黙ったまんまでこっちを見てる。まさかこのワンルーム的マンションの狭いベランダに何故犬がいるのか・・っていう驚きもあって結構びっくりした。犬だけにワン?ルーム・・・その上その犬の口にはなんとガムテープが無造作に巻かれていた。一瞬目を疑った。まさに目を疑うとはこの事か・・。犬の種類はコーギー。昔小泉今日子が午後の紅茶のCMで連れていて、それから人気が出た犬。鼻だけ出して、2回位クルクルっと巻いてあって、ピッと引きちぎったような感じで、そのテープのとがった切れ端が犬の目に少し触れてかゆそうだった。
その狭いベランダの端に小屋があった。コンクリートの床に糞尿は垂れ流し状態。すごい臭い。こんな目にあわされていても、エサだけはくれるから飼い主にシッポを振ってみせたりするのだろうか・・。それがペットとしての犬の宿命なのか・・。なんか悲しくなった。見たくなかった。おそらくその日は植木屋が作業に来るため、吠えて隣近所に迷惑をかけると思ったのだろう。だからってテープを巻くことねーじゃん。マンションの掲示板には、近頃当マンションで飼ってはいけないはずのペットを飼い、近隣に臭いや鳴き声による迷惑をかけている住人がいるとかなんとかってハリ紙がしてあった。飼い主は一体どんな奴なのか。
作業を始めてしばらくすると、その部屋の窓が開いて、40前後の男が出てきた。「どーも
おはようございます。」とこちらがあいさつすると、「あ、どーもお世話様です。」とかって
返す位の普通の男だった。その後犬に向かって、「ハウス!ハウス!」ってベランダの端の小屋を指差して威張っていた。この飼い主にガムテープを巻かれた犬は小屋に入っていった。考えてみたら俺達が作業している少なくとも半日は、水も飲めねーじゃん。増してやエサも・・。あの犬は幸せなのだろうか・・と、一緒にいた熊谷と話をした。果たして犬の幸せとは何なのか・・?そんな事別に考える事でもねーのか?エサをもらって散歩に行けて・・とか色々あるけど、やっぱり飼い主に愛情を注いでもらうのが何よりなんじゃねーかって・・。口にテープを巻くことが愛情なのかい?あの男にとっては愛情なのかもしれないし、ひょっとしたらあの犬もガムテープを巻かれることに喜んでるかも知れねーし・・って二人で言い聞かせた。犬は飼い主を選べない。いや犬だけじゃない。ネコだって、ペットは皆。人間だってそうだ。子供は親を選べない。だからその子供に愛情を充分に注げない奴は親になる資格もない。ペットを飼う時だって同じだろ?責任持てよ、自分のやる事に、やってる事に。ガムテープはねーだろ、いくらなんでも。お前の口に半日ガムテープ貼ってやろうか?
はがす時だって痛いはずだぜ。ヒゲも抜けるし。かゆくなるだろうし。犬も犬だよ。ハウス!って言われて素直に小屋に入るなよ。ちょっとはにらんで唸ってみろよ。あーやだやだ、ホントに嫌なもん見ちまった。
今日もまたあの犬は、糞尿垂れ流しのベランダで、飼い主の帰りを待っているのだろうか・・・。
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