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◎第3章 庭修行本格スタート
晴れて大学を中退した俺は、庭修行に専念することになった。バイト先の植木屋にそのままお世話になることにした。もう後へは引けない。前進あるのみ。人より早く仕事を覚えてさっさと独立しよう。それしか頭になかった。親方によく聞いた。「植木屋を独立開業する時ってお金とか道具とかって結構必要なんですか?」すると親方は、「軽トラックと脚立1本あればどうにかなるよ。」後々そんなに甘くはないと思い知らされるのだが・・・・。まずは仕事を覚えなければ話にならない。はじめに樹木の名前からだった。図鑑を買って植物公園に行ったり、園芸屋に行ったりして必死に覚えようとした。いつ頃花が咲いて、いつ頃剪定すればいいのかなど頭にたたきこもうとした。しかしすぐ忘れる。なぜか?それはやっぱり手をかけてないからだった。その木を植えたり、刈込んだりして、トゲが刺さって痛かったとか、虫が付いててかゆかったとか何でもいいからその木と関わらなければやっぱり覚えなかった。現場では初めての事ばかりで皆について行くのに必死だった。バブルの末期頃の建設ラッシュで、マンションの植栽工事も結構あり、毎日重たい植木をかついだり、ツツジを何千本と植えたり、芝を限りなく貼ったり色々夢中になってやっていた。その他に大きな工場の緑地管理で草刈を延々とやったり、消毒作業では頭から薬剤をダブダブにかぶって昼メシ食う気がなくなったり。街路樹の剪定の時は、親方達4人でバンバン切った枝葉を1人で掃除しながら必死で追いかける。追いつけば俺にも切らせてくれるかなー、とか思いながら追いかける。しかしどんどん離れて行く。「これも修行だ、みんなこうして一人前の職人になって行くんだ。」とか思いながら、300m位続く枝葉の山を前にして必死で追いかけた。川崎駅周辺の街路樹の仕事の時はちょっと嫌だった。と言うのも、これから作業をして行く植え込みに、朝っぱらからお酒をお飲みになってるオッチャン達がゲロを吐いてたり、チン○を放り出して小便をしてたり、植木に普通に洗濯物が干してあったり、時にはどう見ても犬ではない人様のウン○があったりで、それはもう・・・・。植木の根元でダンボールを敷いて寝てるオッチャンに「これから消毒するから濡れるよ。」って言うと、「俺も消毒してくれ。」とか訳のわからないこと言うし。とりあえずおもしろかったけど。ホームレスの人って最初声かけるの怖かったけど、声かけてみると案外素直に言う事聞いてくれた。
個人のお宅の庭仕事では俺は朝から草むしり。そして先輩達が切り終わったところから掃除を始める。俺の腰には、いっちょ前にハサミとノコギリが付いてるけど使い道といったら枝葉を片す時に小さく枝をきざむためだけ。「いつになったら脚立に上って木を剪定させてくれるのかなー。」とか毎日思ってた。もう1年近く経っていた。毎日掃除、草むしり、穴掘り・・・・。親方達が切り落とした枝を使って、自分なりに切ったりして練習してた。また刈込み鋏を買って、俺にも切らせろ!みたいなアピールはしてたけど全然現場では掃除ばかり。もう切りたくて切りたくてしょうがなかったから、休日に人気の少ない公園や霊園に行って、勝手に植木を刈込んだりとかよくしてた。よく職人の世界では、仕事は目で見て盗めって言うけど、それには限度があると思う。全部が全部見てたって実践が伴わないとなかなか身に付かない。そして最低限大事な要点は教えてもらった方が何倍も速く覚える。だから今、やる気のある人、つまり庭仕事に本気の人には、自分の知ってることは惜しみなく伝えるようにしている。
 修行も1年ちょっとした頃、他の植木屋はどうなんだろう?と思うようになっていた。もっとやる気次第で、いろんな事やらせてくれるトコはないかなーとか思って、少し探し始めた。学生の頃から海で遊ぶのが好きだったこともあり、海の近くに住みたいなーという考えもあって湘南方面の植木屋を探していた。
(第4章へ続く・・)
第4章 いざ鎌倉。
第1章 なぜ俺は植木屋になったのか・・・?
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第2章 目覚め。 第5章 少し見えてきた・・。
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