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第4章 いざ鎌倉・・・・。
庭修行を本格化させて1年が過ぎた12月初め、湘南方面の植木屋数社と面接をして、
茅ケ崎にあるそこそこ大手の植木屋に、年明けからお世話になることを決めていた。
そこの親方というか社長は、俺は早く仕事を覚えて独立したいような事を言うと、3年辛抱
すれば独立させて現場もまわしてやる位のことを言っていた。植木の手入れだとか竹垣だ
とか何でもどんどんやらせてやるとか言ってた。資格も取らせるとかも言ってた。また植木屋
には珍しくボーナスも出すって言ってた。金は半分どーでもよかった。
バイトの時から世話になって俺に植木屋になるきっかけを与えてくれた親方に、来月の年明けから茅ケ崎の植木屋で世話になることを伝えた。その翌日から約3週間、俺に対して口数が
明らかに減っていた。年末最後の日の夕方、たき火をしている親方と握手した。
「ありがとうございました。」たき火に目をむけたまま、「オー、がんばれよ。」それだけだった。

 年も明け茅ケ崎の植木屋に初めて出勤した。事務所で新年の挨拶、それから寒川神社へ
初詣に行ってその日は終わり。翌日そこの植木屋の一番のベテラン職人さんと2人で現場へ
向かった。着いた先はゴルフ場で、何をやるかと思ったら、バンカーから砂をグリーンに運んで
ローラーでならして草を取る仕事だった。休み時間にその職人さんとこんな話をした。
「なんでウチの会社に来たの?」と職人。「社長が何でもやらせてやるって言ったから。」
「お前植木職人に成りたいんだろ?」 「ハイ。」 「じゃーウチでは無理だよ。オレ以外職人なんか1人もいねーよ。」 「そうなんですか・・・。」 「現場監督に成るならいいけど、地下タビ履いてやる仕事なんてほとんどないよ。」確かに最初の顔合わせの時、ニッカズボン履いている
人がほとんどいなかった。そして翌日の仕事は、R134号線沿いの砂防林(松林)への散水作業で、その散水車(タンクローリー車)を先導する車の運転。1日中トロトロR134号線の茅ケ崎から辻堂あたりを海を眺めながら往復してた。タンクローリーの運転手に「明日は別に地下タビ履いてこなくてもいいよ。運転だけなんだし。」って言われた。こりゃダメだ、こんな会社に居られない。その日の夕方社長に、「オレ、辞めます。」 「何故だ。まだ3日目じゃねーか。」
「俺は庭仕事するつもりで入社しました。植木や土をいじって作業着が汚れてから家に帰ることを望んでます。現場監督に成る気は全くありません。」 「せっかく来たんだからとりあえず半年辛抱してみろ。3日目でウチの会社の何がわかる。」 「職人はいないらしいじゃないですか。」 「誰がそんなこと言ってた?」 「それは言えないですけど見ればわかります。」余計な事を言ってしまった。「とりあえず明日もう一度話そう。」社長はその日の内に従業員1人1人と面談したらしい。翌日もう一度出社した。現場へは行かず、社長と工事部長と話をした。
執拗に説得を受けたけど俺は辞めることを伝えた。今考えるとちょっと子供だったなーと思うけど、その時は仕事を覚えたかったから仕方がない。
 さあどーしよう、どこの植木屋へ行こうかと2,3日考えていたら年末に面接していた鎌倉の
植木屋の親方から電話がかかってきた。「お前いつから来るんだ?」親方は俺が年明けから
来ると思っていたらしい。何事もなかったように、「明日からお願いします。」 「あ、そう。じゃー待ってるよ。」
そんな感じで、鎌倉の植木屋にお世話になることになった。

 ―第5章へつづく。―
第1章 なぜ俺は植木屋になったのか・・・?
第2章 目覚め。
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第3章 庭修行本格スタート。
第5章 少し見えてきた・・。
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